茂木 宏友
所有者不明土地問題や空き家問題の報道を目にする機会が多くなりました。それぞれの問題が解決されない原因は様々ありますが、その一因は相続登記がなされずに、何十年も亡くなった方の名義のままになっている土地建物が相当数存在することがあげられます。登記がなされずに所有者がわからない土地の面積は、九州地方の面積と同程度存在するそうです。なぜ、そのような状態が生じてしまうのでしょうか。
その理由のひとつは、相続登記手続の義務がないことです。相続税の申告期限は相続発生から10か月以内と定められているのに、登記には手続きをしなければいけない期限がありません。期限がないために面倒な手続きは後回しになりがちですし、手続きを依頼するにもどこに相談したらよいかわからないという方もいらっしゃるでしょう。登録免許税などの費用がかかるということで放置されるケースもあります。
登記をしていない場合のデメリットとして、不動産の売買ができないことがあげられます。長期間相続登記がされていなかったために東日本大震災の復興事業の足かせになるなどして、この問題が注目されました。高台に復興住宅用地を造成するため、自治体が買収する前提として当該山林の所有者を確定させる必要がありました。登記簿に記載されている住所と氏名から住民票の調査をしたところ、住民票の除票の保存期間(5年)が経過しているため入手できず、相続人を調べることすらできないケースもあります。そのようなケースの場合は裁判所に相続財産管理人の選任を申請しなければならず時間がかかります。
最近は、登記を管轄する法務局でも相続登記を促進させるために法定相続情報証明制度など新たな制度を設けています。さらに、相続登記を義務化させようという動きも出てきております。不動産登記制度の根幹にかかわる部分ですので、様々な意見が出されているようですが、相続登記未了で使えない状態の土地や空き家を増やさないためにも相続登記の義務化は進んでいくものと思われます。子や孫の世代に負担をかけないためにも、相続手続きがお済でない場合は、司法書士会にお問い合わせをしてみてはいかがでしょうか。
次回は株式会社 安住商会 代表取締役 安住陽一様