SEVEN BEACH PROJECT 実行委員長
七ヶ浜観光協会 副会長 久保田 靖朗
「ガレキからビキニへ」の合言葉で2013年に七ヶ浜町菖蒲田海水浴場で始めた私たちの活動も、7年が経ちました。「海は危険で怖いもの」「子どもだけで行ってはいけない」という学校での教えもあり、数年前まで海は全く人が来ていない状態でした。しかし、防潮堤工事も終わり2017年からは震災後7年ぶりに本格的な海水浴場OPENとなりました。OPEN後は徐々に人が戻ってきており、昨年の夏は冷夏が心配されましたがそれでも約6万人の方が海に来られました。海と人との関係は徐々に戻りつつあると思っています。
飲食業を菖蒲田海水浴場の目の前で始めたのは海開き直前の2016年5月。ありがたいことにランチには多くのお客様に来ていただくことができましたが、ディナーに来るお客様は始めのうちまずほとんどいらっしゃらず、スタート当初は1ヶ月のうちに2組6名だけの時期もありました。苦悩もしましたが、町が戻っていくためには光をつけている必要があることを強く感じており、意地になってディナーも続けていたところ、最近では結婚記念日や誕生日など特別な機会にお食事に来ていただける事も少しずつ増えてきました。
飲食業は食事を提供しているのではなく、豊かな時間をサーブさせていただいているんだなとつくづく感じております。お腹を満たすという行為だけであればお店に来る必要はありません。だからこそ一皿一杯にそれだけ真摯に向き合え、食材一つ一つまで徹底的に物語にこだわれるかがとても大切なのだと痛感しております。そして最近さらに学んだのは食材だけでは足りず、空間価値として店舗をとらえ直した時に、そこには大きなメディアとしての機能をもっていると考えています。だからこそ、地域としての価値を考えた時に私たちはどんな店舗であるべきなのか、今の世界において私たちはどういうメッセージを世の中に出すのか、という視点でも常に空間を捉えなおさなければいけないのだなと感じており、反省し現在は改善案を作っているところです。
次の3月でついに震災から9年目となり、10年目が始まります。2021年の3月以降、私達はどのような世界を生きぬいていくのか。これからも海と地域と向き合いながら、一人でも多くの方にとってビーチが癒しの空間であれるよう一所懸命頑張っていきます。
次回は花薫る喫茶処 蕾 店主 羽生裕二 様