第57回 第59回

随想第58回

鈴木 弘二 都市のシンボルとは (株)鈴木弘人設計事務所 建築家 鈴木 弘二

一度は訪ねてみたい都市が世界中にあります。日本では京都・奈良・金沢。また、外国ではパリ・ローマ・フィレンツェなど枚挙にいとまがありせんが、古代の遺跡、中世の街、近世の街、神殿、教会、宮殿、様々な歴史的遺産を持つ街が挙げられます。

例えば、ギリシャのアテネにあるパルテノン神殿は、遥か昔からその存在だけで、世界中から人を集める力をもつシンボルであり、アテネに暮らす人々はその恩恵を永遠に受け継いでいます。 しかし、このような都市は、その遺産を地元の人々が、戦争や政変など繰り返し遭遇しながらも、建築や遺構を大切にし、修復・復元・保存を繰り返し行い、努力して後世に残してきたのです。

一方、仙台のように、不幸にも戦火により過去の歴史遺産が焼失した都市は、何をよりどころに、まちづくりを進めるべきかを昔から問われて来ました。

あの有名なパリのエッフェル塔。現在ではパリの市民が愛するシンボルであります。しかし、建設当初は市民から大ブーイングを起こした建築物なのです。 設計者のエッフェルは、鋳鉄による最先端の技術を駆使し、当初流行っていた、アールヌーボーのデザインを取り入れました。そして、世界一の高さを誇る塔を創り上げたのです。 当時としてはあまりにも斬新で、過激なデザインだったので、パリに住む知識人たちから、パリにそぐわないと、酷評されたのでした。

さて、仙台に住む人々に街のシンボルは何か?と尋ねると、多くの方が定禅寺通りのケヤキ並木と返答されます。 それは、「杜の都」の象徴としてケヤキ並木があり、光のページェントを始め春夏秋冬、様々なイベントがその下で行われるからです。仙台の人々には、なくてはならない存在であると考えられます。 このケヤキ並木は戦後復興により、整備された街路樹が60年経過し、仙台のシンボルとして、昇華したことを意味します。 このケヤキ並木をシンボルとして仙台のまちづくりを進め、今後もさらに魅力的な都市として発展させるには、他の要素を取り入れなければなりません。

それは、ケヤキ並木と同調するような、美しい建築物が建ち並ぶ街並みや景観を造りだしていくこと。 また、青葉城や大手門を初めとする歴史的な建築物の、復元・再生を目指し、伊達文化の拠点である仙台のまちを強くアピールすること。 さらに、仙台市役所(シティーホール)の建替えや市民音楽ホールなどの建築に当たり、今日の最先端の技術を用い、世界に誇れる独創的な建築を創造すること。

このような要素を取り入れ、総合的な「杜の都」仙台のシンボル化を推し進め、エッフェル塔のように時の経過と共に市民に愛されるシンボルを目指し、後世への遺産となる町づくりを進めていくべきであると考えます。

次回はサンケミファ株式会社 代表取締役社長 照井潤氏