杜の都の美術館ホテル、昭和60年に営業を開始した当江陽グランドホテルの通称である。地上13F地下2階の当館は、先の東日本大震災発生時には当時3百人を超す宴会の最中であったが、適切な誘導もあり一人の怪我人を出すことなく安全に避難頂くことが出来た。その建物の要所要所には、欧州や香港で買い求めた美術品の数々が並んでいる。2mを超す象牙の彫物やナポレオンの愛用した「Nマークの2対の壺」そして大英博物館に飾られるはずであったスフィンクスの姉妹等々枚挙に暇がない程の調度品が連なる景観。海外からの宿泊客にも好評であり、当館の魅力として画像及び英文説明を鋭意整備中である。
東日本大震災から3年半、被災された方々に風化させてはならない気持ちで一杯ながらも現実は震災バブルの終焉の時期にあたり、東北を訪れる外国人観光客の激減からの復活、観光立国化が急務である。宿泊業から見てシティセールスが自分達の未来に跳ね返って来る現状に鑑み、前回随想を書かれた勘三郎社長を中心に今年度秋保温泉組合が様々企画した集客プロジェクトがあるが、その黎明期に参画させて頂いた立場から少し触れてみたい。
《今年度の秋保の試み(ソフト面の情報統合)と総括》
- ダンスPVの制作「踊ろうぜAKIU」(秋保の景観と温泉の楽しさを動画で世界に発信)
- 秋保を知る(ホテル従業員や子供への啓蒙、郷土愛の醸造)
- 伝統のフカ料理の復活と主要旅館での冬の膳(ランチ)の提供
- 外国人ブロガーの招聘(街を2日間歩き、印象に残ったポイントを炙り出す)
特に4.の成果発表時には、意外な結果に皆驚きを隠せなかった。「干し柿とこけしの絵付体験が良かった」と海外の若者は感想を述べた。街の魅力とは...毎日同じ風景を見ている地元の人々には平凡に映り、村おこし的魅力発掘は異人を入れなければ発想は出てこないと震災復興時のコンサルに聞いたことがあったが、その通りの結果である。「おもてなし」施設サイドと利用者目線が如何に乖離しているか、非常に参考になる企画の検証であった。
現在盛り上がっている秋保のムーブメントを仙台市中心部にも伝播させ、太い絆で「杜の都仙台」と「仙台の奥座敷、秋保温泉郷」が連携していくかってなかった試みが、若年層でも「成程魅力的だね、仙台へ行ってみたい」と思っていただける層を地道に増やしていく策であり、今が旬のダンスPV等も含めたネット情報発信に代表される新たなチャネル展開、新たな顧客創造が必要ではないか、またその継続の重要性を痛感している次第である。現代はハードだけでもソフトだけでもダメな「おもてなしの知恵」が試される時代に着実に変化してきている。それは規模の大小に関わらず、我々宿泊業だけではなく「都市の魅力」として料飲サービス業全てに今まさに問われている命題ではないだろうか。
次回は、公益財団法人 仙台観光コンベンション協会専務理事 壱岐(いき)雅章氏