随想 絆

株式会社坊源 専務取締役 原 太一

第37回 2013年「第1回 旅館甲子園」でグランプリ受賞

株式会社坊源
専務取締役 原 太一

 株式会社坊源は、私の父が昭和60年に宮城県柴田郡川崎町青根温泉で創業し、本年で31年目を迎えます。私の父は旅館業に就くまで、芸妓さんの置屋、寿司屋、バー、うどんそば屋、お土産屋、屋台を引き団子売り(後に青根温泉名物となる)など様々なことにチャレンジしてきました。

 そして最後に行き着いたのが旅館です。当初旅館といっても自宅を改装した民宿でした。お風呂も温泉を分けてもらえず小さな湯船にお湯を入れ、ガスで沸かしたお風呂です。記憶する限り毎日真っ暗でお客様は全くいませんでした。その中でお越しくださるお客様一人一人に楽しんでもらおうと自ら夕食の接待や、自分の得意なスキー教室も開きファンを増やしていったのです。徐々にお客様も増え、そんな父の性格が出たこの宿を当時人気があった温泉番組が取り上げそれ以後連日沢山のお客様で賑わうようになりました。その当時私は中学生で、学校から帰るといつもお客様が宴会をされていてカラオケでサザンカの宿を歌われていたのが印象的です。おかげさまでサザンカの宿を歌えるようにもなりました。

 楽しそうに働く両親を見て育ったからか、大学卒業後は両親と共に働きたいと思い家業へ就きました。ところが24歳の時に理想と現実のギャップにうつ病にかかってしまいました。毎日が暗く、なぜ生きているかさえもわからない日々が約1年間続きました。そんな中仙台の飲食店でランチを食べる機会があり、そこで働く人たちの目の輝きに魅了され、「僕も働く人達が輝く旅館を作りたい」と思った瞬間、今までトンネルの中を歩いていた自分は一気にトンネルの外へ出たのを感じました。眩しくて、暖かくて、希望に満ちている自分がそこにはいました。次の日から早速現場作りを開始しました。変わっていく体制の中で「あなたには着いていけない」と去っていく人もいました。寂しい思いはありましたが、決めたことを必ず実現するため前だけを見つめ取り組みました。

 その甲斐あって、2013年に行われました【第一回 旅館甲子園】でグランプリを受賞することができました。仲間一丸となった瞬間でした。現在、旅館2施設、飲食店3店舗を運営しております。これからも地域に必要とされる企業となるよう精進してまいりたいと思います。

次回は株式会社 新澤醸造店(伯楽星) 代表取締役 新澤 巌夫氏

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