第90回 第92回

随想第91回

ビーエッチ株式会社 代表取締役 髙橋 進伍 お祭りイノベーション ビーエッチ株式会社
代表取締役 髙橋 進伍

東京オリンピック・パラリンピックの大会開催経費は、1年延期となったことで、総額1兆6,440億円となっているが、1年延期による経済的損失は約6,408億円。1年延期され、観戦者が会場の約半分に簡素化されたときの経済的損失は約1兆3,898億円。1年間延期されたが、ワクチンなどの開発で無観客ながら開催されたときの経済的損失は約2兆4,133億円。中止の際の経済的損失は約4兆5,151億円にのぼると、関西大学の宮本勝浩名誉教授による試算結果を明かしている。

2020年度は、私が住む仙台市でも、新型コロナウイルス感染症の影響で、たくさんのお祭りが中止となった。これは仙台経済の大きな損失となったと言っても過言ではないであろう。地域、四季それぞれに魅力の溢れる日本では、お祭りという文化で人と人との繋がりを保ってきた。中でも、お祭り関係者が地域に与える「情熱」は、地域を牽引する「リーダーシップ育成」に通じるものがあり、基本的にその町内に住む人が中心となって活動するため、地域コミュニティの形成にも大きく寄与してきた。

また、地域によっては、お祭りの拡大化によって外部から人を呼び込み、経済を回す潤滑剤として活用しているところも多い。このように、お祭りは昔から全国各地で地域に大きな経済効果を齎してきたが、新型コロナウイルス感染症拡大から接触リスクの高いお祭りは、現在、その在り方を問われている。オンライン化など、様々な対応策が講じられたが、原体験を通して伝わる「情熱」のデジタル化は不可能であり、未来を担う地域リーダー育成の機会が損なわれてしまうため、前向きに開催を目指していくことが必須である。

今後は、これまでの様々な経験を糧に、明確な根拠として、リスク回避の対策を早急に構築させ、新しい技術や手法を取り入れ、正しく恐れながら、経済再生を優先させていくことが、これからの地域にとって非常に重要であると考える。

次回は株式会社清月記 専務取締役 菅原啓太様