第84回

随想第85回

NPO法人食空間コーディネート協会(フード&テーブルコーディネート・サロン主宰) 渡辺 世津 『卓育』とは? ――― 次世代に繋ぐ大人の役割 NPO法人食空間コーディネート協会
(フード&テーブルコーディネート・サロン主宰) 渡辺 世津

 バブル景気に湧いた30数年前、世の中にはモノが溢れ、高価な海外製品も手軽に買え… しかし、そんな時代は長くは続かず、バブル崩壊で生活は大きく変わりました。私たちはそのような時代に、食空間コーディネーターとして「卓育」に取り組み始めました。

 子どもを心身ともに健やかに成長させる教育に「知育」、「徳育」、「体育」が挙げられますが、平成17年にもう一つ「食育」が加えられました。「食育基本法」が制定され、「生涯にわたり健全な心身を培い、豊かな人間性を育む」ことが教育の一環として加えられたのです。「卓育」はその中で、教養や躾、マナー、伝統文化や風習、食文化等を身につけるものとして大きな位置を占めています。

 今、子どもたちの置かれている生活環境はいいとはいえません。社会の影響を受け、夜更かしからの朝食欠食や孤食、暴飲暴食による肥満や糖尿病、少年期の生活習慣病など食生活も乱れています。その改善を目的として、NPO法人食空間コーディネート協会では全国で卓育インストラクターを養成し、その改善に取り組んでいます。

みんなで食卓を囲む(共食)ことで社会性やコミュニケーション力が備わります。私たちは動植物の命をいただき生かされていること、毎日の料理は多くの人の思いやりで出来ていることを理解し、「いただきます」、「ごちそうさま」の言葉で感謝を表します。自国の伝統や食文化を体験することで他人を思いやる心も養われていきます。「三つ子の魂百まで」というように、幼児期の生活の中で身につけた多くの体験は生涯の財産に値する基となります。フランスの食評論家の言葉に「禽獣は餌を食らい、人間は食べる。しかし、教養ある者のみ、その食べ方を知る」と言っていますが、生命を維持するための栄養補給にとどまらず、人間には「おいしい」という精神的満足も必要なのです。

NPO法人食空間コーディネート協会では、保育園・幼稚園を廻り、卓育の重要性、必要性を伝える活動を続けています。皆様に「卓育」をご理解いただければ幸いです。

次回は有限会社 アトリエデリス 代表取締役 一般社団法人みのり代表理事 佐々木文彦様