第79回 第81回

随想第80回

花薫る喫茶処 蕾 店主 羽生 裕二 ガレキからビキニへ 花薫る喫茶処 蕾
店主 羽生 裕二

  私は塩竈市で喫茶店を営みながら、松島湾に浮かぶ浦戸諸島の島おこしを目指す『浦戸の花物語プロジェクト』を運営しています。離島という地域条件に加えて、東日本大震災の津波被害で過疎化が深刻な島々の活性化を一助するために発起しました。本職であるパン職人の職業スキルを活かし、島々で生産した小麦やハーブなどを加工した商品開発及び流通拡大に取り組んでいます。

 先天性の聴覚障害がありますが、生まれ育った境遇と身体の不自由は人生を制限する理由にならないと社会的に証明するとともに誰もが生きづらさを抱えることない共生社会の実現を目指して活動しています。その過程で浦戸諸島を知り、この地域が抱える課題に取り組むことが私の出来ることと確信して起業しました。最初は私一人で発起したプロジェクトですが、三年程経った今では様々なメディアに取り上げられるまでに知名度が向上しました。新聞やテレビで全国に知れ渡り、塩竈市と協働させて頂けるようになったことで社会的意義を感じています。これはひとえに、私の想いに共感してくださっている方々の惜しみないご協力があってこそだと日々実感しています。

 この事業を推進させる過程でいつしか創られた共生コミュニティを限りなく拡げていくと、浦戸諸島のみならず各地域が抱える課題、ひいては宮城県における障害者法定雇用率の引き上げにもなると信じ、奔走しています。起業して二年ほどの駆け出し起業家ですが、様々な社会課題と向き合う中で培われる知識や人脈は信念成就に向けての力となると確信出来る日々が様々な課題に立ち向かう力となっています。

 パン職人としては長く愛される商品を開発し、起業家としては持続可能な六次産業の創造を多くの方々とともに目指す。それが、浦戸の花物語プロジェクトです。決して平坦な道のりではありませんが、20年計画で想いを成就出来るように展開しています。東北に耳の聞こえない起業家の事例を創るとともに、あらゆるマイノリティが活躍出来る共生コミュニティをここ宮城から全国に。私は震災前に愛媛県から移住してきましたが、これらも今となっては何としても成し遂げたい信念となっています。

次回は洋菓子店 ピュイダムール シェフパティシエ 磯 知之 様