第53回 第55回

随想第54回

山川龍巳 東北の魅力を、最大に発揮する舞台が始まる 株式会社 わらび座 代表取締役社長 山川 龍巳

3年前、この分野の歴史研究の第一人者で歴史学者の浜田直嗣先生は「この前(2011年)の大地震と大津波に出あわなければ、多分気付かなかったと思います」と述べたあと、続けて以下のように語った。

「石巻、月の浦から500トンもの木造船サンファンバウティスタ号が太平洋を横切り、メキシコ経由でスペイン、バチカンに向かったのは400年前。船を造る技術も、操る技術も未熟で不確かな時に、彼らの背中を押したのは、その2年前に起きた大地震と大津波だったのではないか」「復興を願っての出帆だったのではないか」「考えてもみてください。400年前と現代、モッコ担いで仕事するのと、ブルドーザーで仕事するというのは比較にならないほどの、科学技術力の差です。その現代であっても、震災の2年後程度では、あまりにも悲惨過ぎて、壊滅的で、どんなプロジェクトも動かないし、動かせないのです。400年前の災害もほぼ同じ規模だということはわかっているのです」「その時に、前から遣欧使節の計画はあったのでしょうが、あの壊滅的な事態と無関係に行ったとはどうしても思えない」「そのことに考えが及んだのです」と聞いた時には震えた。

「ジパング青春記」のミュージカルの舞台創造は、こうやって始まった。東北は冷夏があり飢饉や干ばつの時には飢え死にさえ経験し、300~400年には必ず襲って来たであろう壊滅的な悲劇の中で、生きて来た。この東北の不屈の魂を石巻、仙台、宮城の子供たち一万人に見せるために大きな実行委員会が結成された。すでに県内一万人以上のオーダーがきており、無料招待のお金もほぼ達成された。残るは大人の6千人である。来年1月20日から26ステージ、電力ホールで予定されている。東北の力は半端ではない。東北の力を知れば日本中が元気になると信じて疑わない。励ます力にあふれている。いつまでもおとなしい東北、自己主張しない東北などと言わせていけない。東北の魅力を最大に発揮する舞台が始まる。地方発信の舞台は都会人の「度肝」を抜くことが重要なのだ。4代目猿之助が世界的に有名なアニメ「ワンピース」をスーパー歌舞伎として上演し、圧倒的な評判を勝ち取った。ジパング青春記はその横内謙介の脚本、演出。振り付けはラッキイ池田。音楽は深沢桂子。3・11の悲劇が作らせたこの舞台を観て一緒に泣きたいと思う。

次回は東北たばこ販売協同組合連合会 会長 平賀ノブ氏