第41回 第43回

随想第42回

辻尚広 牡蠣の独り言 三養水産株式会社 代表取締役 辻尚広

突然ですが、皆さん「世界の牡蠣王」と呼ばれた方をご存知でしょうか?それは、今は亡き食生活ジャーナリストの故・岸朝子さんの父である「宮城新昌」氏と言う方です。

なぜ世界の牡蠣王と言われたのか、それは新昌氏の経歴そして功績に遡りますが、1884年沖縄県大宜味村に生まれ同県立農林学校を卒業後米国ワシントン園芸学校で学んでいたが、当時ルーズベルト大統領が天然カキの乱獲問題を心配している事を知った新昌氏は、農政から水産に進路を転換しカキ養殖を学び始めました。

帰国後は全国各地で試験的な養殖事業を行ってきたが事業の最適地として石巻万石浦湾にて養殖場を設置し、種カキ種苗養殖栽培の技術により、石巻からアメリカやフランスなど数多くの国々に種カキが輸出され実績があり世界の80%(数値は定かでない)が石巻にルーツが有るとも言われています。

また新昌氏の最大の功績が、飛躍的に生産効率を高める養殖技術「垂下式養殖法」を考案した事。今ではこの技術開発により地域の基幹産業とまで成長し、さらに全国各地に及ぶカキ養殖産業まで発展し続けて来ました。

今では量販を中心に多く市場へ流通している反面、これまでにカキは色々と世間で騒がれた時代もあったと思います。少なくとも飲食業界ではリスクの高い食材として取扱いを拒むお店も多かったのではないでしょうか。

しかし、近年の傾向として飲食業界では非常に激化している中でも特にコンセプトがはっきりした店作りが多く展開されているのが感じます。特に牡蠣を取り扱う業界として喜ばしく感じる事の一つとして「牡蠣小屋」「バル」といった明確な店舗展開をするお店が増えつつありカキの需要度が高まった事や本来ならば旬でしか味わえなかった食材が冷凍技術の進歩で通年供給が可能にまでなっている。さらに安全性に対する生産現場での取り組みも過去に比べれば数倍も品質が高まっているのは間違いありません。

最後になりますが、宮城のカキは今も様々な進化をし続けております。この食材を更に価値あるモノとすべき一助となるのが調理とする技術の進化。いい食材と調理提供の一工夫が、お客様へ満足感を与えられ、食で笑顔と感動をもう1品ご提供できると感じます。

飲食店の皆様には積極的な取り扱いを願いたいと信じております。

次回は山徳平塚水産株式会社 代表取締役社長 平塚隆一郎氏