第31回 第33回

随想第32回

熊谷育美 宮城の豊かな自然や港、あたたかな心に包まれながら作品は生まれる シンガーソングライター 熊谷育美

宮城県気仙沼市に生まれ育ち、メジャーデビュー後も気仙沼市に暮らしながら音楽活動をさせていただき今年で6周年を迎えます。仕事柄、今日まで全国あらゆる街へお邪魔してきました。その土地ならではの風土やお人柄に触れ、多くのことを学ばせていただく日々。街の特性を最大限に生かした名産品や、歴史的建造物、代々伝承されてきた郷土芸能など・・・知れば知るほど興味深く旅先での探索も楽しみなひと時です。

また、季節ごとに表情を変える車窓から眺める光景もとても感動的です。私にとって故郷であり、帰る場所=「東北」には古き良き日本が未だに色濃く残っており、旅先からの帰路は懐かしささえ感じます。山並みから田園風景を抜け、リアスの入り組んだ海岸線に辿り着けば、「おかえり」という声が潮風に乗り聞こえてくるのです。

私はこれまで、宮城・気仙沼市の豊かな自然や、活気ある港、あたたかな人々に包まれながら作品を創ってきました。発表してきた楽曲はすべて気仙沼市の自宅で手掛けたものです。言葉(歌詞)を紡いで、ピアノを弾き、リズムとメロディを描いていきます。完成した楽曲は、アレンジャー・ミュージシャン・エンジニアなど、音のプロの職人の技により緻密な作業を経ながら「レコーディング」が行われます。その後はレコード会社の皆様や数多くのスタッフさんたちの手により「CD」というパッケージや、「配信」という形で皆様の元へ流通されていきます。私が気仙沼で創作した作品たちが、日本国内や国境を越えて届いていることを実感する瞬間は何にも代え難い幸せです。そして、その度に故郷・気仙沼の恵まれた環境に在りながら創作できる喜びと感謝の気持ちが生まれてくるのです。

さて、まだまだ旅の途中・・・愛する宮城の地に居を構えながら、この先、私が出逢う景色は一体どんなものなのでしょう?沢山の思い出という宝物と、溢れんばかりの期待を胸に一歩ずつ前進して行きたいです。

次回は仙台ターミナルビル株式会社 常務取締役 三浦丈志氏