第25回 第27回

随想第26回

風見正三 志と優しさの連鎖が地域を輝かせる 宮城大学事業構想学部 副学部長 教授 風見 正三

皆様、はじめまして。宮城大学事業構想学部の風見正三です。この度は、アリティーヴィーの浜さんからバトンを頂き、大変光栄に思っております。「絆」という言葉に触れると、3.11を超えて、震災復興の日々を共に歩んできた同志の顔が浮かびます。大津波ですべてを失った状態から立ち上がろうとする勇敢な住民のみなさん、荒涼とした大地からの再建を図る事業者や行政担当者の方々、それらを支える我々のような専門家、そして、全国から集まって頂いた支援者の方々、それらに光を与える浜さんのような心ある報道陣の仲間たち、すべてが東北復興に向けた「絆」を胸に復興の日々を歩いてきました。

私は関東の美しい田園地帯に生まれ、絵を描くことが大好きな自然児として育ちました。大学で建築、都市計画を学んだ後、シンクタンクの研究員を経て、大成建設に入社し大規模な都市開発に携わりました。人生の大きな転機となったのは、企業派遣として留学していたロンドン大学時代に地球の未来を議論する国際会議「地球サミット」に参加したことです。私は、この会議を通じて、持続可能な社会を創造することの重要性に着目し、その鍵となるのはコミュニティの存在であると確信しました。帰国後、コミュニティ主体のまちづくりを実践するために、大学教授への道を目指し、東京工業大学大学院で博士号を取得した後、2008年から宮城大学教授に就任し、東北の豊かな地域資源に立脚した持続可能なまちづくりの実現に全力を尽くしてきました。

そして、2011年の大震災に遭遇し、多くの仲間を失い、この生かされた命を真の創造的復興のために捧げたいと思いました。震災後、多くの志が連鎖し、復興に向けた様々な「絆」が生まれてきました。東松島では、津波によって流された小中学校を、C.W.ニコル氏と協力し、森と共生した「森の学校」として再建するプロジェクトを推進しています。また、大崎市、加美町、亘理町などでは、震災後の総合計画の策定に携わり、中心市街地の活性化プランの策定を進めるなど、様々な震災復興事業に携わってきました。

東北は大震災という厳しい試練を受けることになりました。しかし、東北の未来は日本の未来につながっています。最近、私は、思うようになりました。東北の強さは「志と優しさ」である。東北の挑戦は、まだまだ始まったばかりですが、被災地では、日々、新たな志と優しさが連鎖し、地域を輝かる力となっています。今こそ、大震災の教訓を踏まえて、東北の強い「絆」を全国に広げて、21世紀にふさわしい「持続可能な未来」を東北から世界に向けて発信していきましょう。

次回はTBC東北放送報道部 専任部長 ニュースキャスター 横山 義則(よこやま よしのり)氏