第110回 第112回

随想第111回

特定非営利活動法人ハーベスト 代表理事   山 﨑 賢 治 街場にたき火がある景色 特定非営利活動法人ハーベスト
代表理事 山 﨑 賢 治

私たちの団体は、中高生が様々なオトナの生き方や働き方に触れることで自身の在り方を考える場となるキャリアセミナーというプログラムを15年間にわたって県内の中学校・高校に提供してきています。そんな仕事がら、日頃から様々な人同士が対話を通じて互いに成長していけるような場づくりに関わることが多く、ここ1年は焚き火と対話をテーマとしたコミュニティである仙台たき火ティーの活動にも参画し、様々な人とたき火を囲んできました。

この秋には、仙台市が実施した青葉通りの一部を活用した社会実験へのお招きがあり、約3週にわたって仙台駅前でたき火を焚く機会を得ました。仙台駅のオレンジの色の看板をバックに同じ色味で燃える炎。誰も見たことのない景色がそこにはありました。
ご存じのとおり、たき火は、囲む人の心身をひらき、ゆったりとした気持ちの中で彼我の無い穏やかな場を創ることができる最強の対話促進装置であり、わずか40センチ四方のたき火台で焚かれた炎の存在は、街の一角を柔らかな空気に変えていました。夕方の帰宅時間、多くの人が行き交う中で、炎や、薪が燃える匂いにつられてくるように人が集まりだします。
「ホンモノの焚き火だ!」とビックリしつつ嬉しそうな顔があつまってきて焚き火を囲んでいきます。ただただ黙って炎を眺める人、隣に居合わせた人とすっかり打ち解け会話が弾んでいる人達や、火守りに問わず語りをしていく若者、それまで互いに景色の一部として背景に溶け込んでいた人たちが活き活きとした人物として眼の前に現れ、そして繋がっていく、それはもう奇跡のような様子でした。街の入口にそんな優しい空気が溢れるたき火場がある。旅人にとってこれ以上のホスピタリティは無いかも。
実際に県外からの旅行客が焚き火に惹かれてやってきて、そこで地元の方からオススメのお店を聞いて足を向けていく・・そんな様子も見ることができました。誰でもやさしく包む迎え火のようなたき火場の存在、実験期間に限らずこの炎が街のただ中で燃え続けることを願わずにはいられないくらい素敵な場でした。またいつか街場のたき火を囲める日が来ますように。

次回はブエンモスト株式会社 代表取締役 箱崎 舞 様