第101回 第103回

随想第102回

株式会社Glad ation代表取締役 洋菓子店「九二四四」オーナーシェフ 橋浦 邦義 人と人とが繋がる役割と価値 株式会社Glad ation代表取締役
洋菓子店「九二四四」オーナーシェフ
橋浦 邦義

仙台市青葉区二日町、晩翠通りに面したビルの1階で洋菓子店「九二四四」を運営しております。2010年7月の開業でしたので、現在12年目となりました。

これまでの営業活動を振り返ると、私にとっての大きなターニングポイントは3つありました。

一つは、開店から8ヶ月目に起きた震災、もう一つは 今から4年前に受けた心臓の手術、そしてもう一つは新型コロナウィルスによるパンデミックです。開店して1年足らずで起きた震災では、友人やたくさんの協力者の方々と共に行った支援活動を通して、普段からの連携の必要性を実感しました。そのため、年齢が近い仙台市内のパティシエの方々に声をかけ、同業者のコミュニティを立ち上げ、様々なイベントを企画・展開しました。菓子職人としてアイディアやセンスを認めてもらい、各店がより賑やかになることを望んで様々な形で外に向かってチャレンジしていました。ですが、ある時の検査で、心臓の手術をした方がいいと医師から指摘され、全く症状もない状態でしたが、大がかりな手術を受けることとなりました。術後、約2ヶ月で現場には復帰できましたが、以前のように体を酷使するハードな働き方はできなくなりました。

様々な方に助けていただきなんとか乗り越えてきましたが、その中でも特に痛感したのは、自分が不在だった間にお店を切り盛りしてくれたスタッフたちへの感謝の気持ちと、また、自分一人でなんでもやれると思い込んでいた考えを大きく変えていかなければならないという思いでした。それからは、外に向かって自分の表現をアピールすることだけでなく、内部の環境整備にも注力するようになりました。多くの方の支えのおかげで、2021年9月に法人化し、株式会社Glad ationを立ち上げ、現在は社員7名、パートアルバイト11名という構成で日々営業しております。

コロナ禍においては、俗にいう「テイクアウト需要」「巣ごもり需要」という面で洋菓子店は好調の時期もありました。ですがそれ以上に、人と人とが繋がる上で果たせる、お菓子やケーキの役割の大きさもあらためて感じました。その価値をしっかり噛みしめながら、より求められるお店を作っていきたいと考えております。

次回は株式会社ABICO 代表取締役 安彦滋夫 様